自転車で車・バイクと事故にあったら自賠責へ直接請求できる?被害者請求の手続きを確認

車・バイクとの事故後に、自転車利用者が自賠責への直接請求方法を確認しているイラスト 保険・補償

自転車で走行中に車やバイクと接触してけがをすると、治療費や休業による負担など、さまざまな問題が一度に生じます。相手の連絡先や車両情報は分かっていても、実際にどこまで賠償を受けられるのか、自分から請求できる方法があるのか分からず、不安に感じる方もいるのではないでしょうか。

このような場面で関係してくるのが、自動車損害賠償保障法にもとづく自賠責保険・共済への「被害者請求」です。自賠責の対象となる人身事故で、相手車両に自賠責保険・共済が付いている場合、被害者自身が相手の自賠責保険会社・共済組合へ直接、人身損害の賠償額を請求できる仕組みがあります。

本記事では、被害者請求を考える前に確認しておきたいこと、自賠責で対象となる損害の範囲、必要書類の準備の仕方、治療中でも請求できる場合があること、そして請求の期限について整理します。

この記事でわかること

  • 車・バイクとの人身事故で、被害者が自賠責保険・共済へ直接請求できる仕組み
  • 被害者請求を考える前に、相手の自賠責会社や一括払いの状況をどう確認するか
  • 自賠責で対象となる人身損害と、自転車などの物損との違い
  • 被害者請求に必要な書類・手続きの流れと、請求できる期限

結論|車・バイクとの人身事故では被害者が自賠責へ直接請求できる

自転車で車やバイクとの事故に遭ってけがをし、その事故が自賠責の対象となる人身事故で、相手車両に自賠責保険・共済が付いている場合、被害者自身が相手の自賠責保険会社・共済組合へ損害賠償額を直接請求できます。これは自動車損害賠償保障法16条にもとづく「被害者請求」と呼ばれる仕組みです。

たとえば、相手側から賠償を受けられていない場合でも、被害者側から相手車両の自賠責へ請求する方法があります。

ただし、車やバイクが関係した事故なら必ず自賠責から支払われるという意味ではありません。自賠責の対象となる事故かどうかや、事故とけがとの関係、実際に生じた損害などが確認され、支払基準にもとづいて支払額が判断されます。

なお、本記事が中心に扱うのは、相手車両が特定でき、自賠責保険・共済がある場合です。ひき逃げにあった、または相手車両が自賠責保険・共済に加入していなかった場合については、政府保障事業を解説した記事で確認してください。

被害者請求を考える前に相手の自賠責と任意保険の対応状況を確認する

自宅の机で保険会社へ電話して対応状況を確認する人

相手の自賠責会社は交通事故証明書で確認できる

相手の車のナンバーや連絡先が分かっていても、その車両がどの自賠責保険会社・共済組合に加入しているかまでは、その場では分からないことがあります。

国土交通省の案内では、交通事故証明書に当事者の自賠責損害保険会社・共済組合の名称と証明書番号が記載されるとされています。相手の自賠責会社が分からない場合は、交通事故証明書を確認することで請求先を調べられます。

たとえば、事故現場で相手の氏名や車のナンバーは確認したものの、自賠責会社の名前までは聞いていなかったという場合でも、交通事故証明書が請求先を確認する手掛かりになります。

交通事故証明書は、警察への事故の届出が前提になります。事故直後の対応については自転車事故にあったときの基本手順を解説した記事、交通事故証明書の取得方法や利用場面については交通事故証明書の記事で詳しく確認できます。

一括払いなら被害者請求をしなくても自賠責分を受け取れる場合がある

相手が自賠責保険・共済に加えて任意保険にも加入している場合、任意保険会社・共済組合が、その支払責任の範囲で、自賠責分を含めた賠償金をまとめて支払うことがあります。これを一括払制度といいます。

たとえば、事故後に相手の任意保険会社から連絡があり、病院への治療費の支払いなどがすでに進んでいる場合は、まず「現在、一括払いで対応されているのか」を確認してみましょう。

一括払いで対応が進んでいる場合は、自賠責分も含めて任意保険会社等から支払いを受ける仕組みになっているため、通常は自賠責へ別途被害者請求をする必要はありません。

一方で、示談交渉が難航している場合などには、任意保険会社等との交渉をいったん打ち切り、被害者自身が自賠責保険・共済へ直接請求する方法もあります。

大切なのは、一括払いと被害者請求を重ねて進めようとするのではなく、現在どの仕組みで支払いが進んでいるのかを先に確認することです。相手方の保険会社から連絡を受けたときに確認したいことは、こちらの記事でも整理しています。

自賠責で請求できるのは人身損害で自転車の修理費は対象外

診療費の領収書をファイルへ収める手元

治療関係費・休業損害・慰謝料などが対象になる

自賠責保険・共済は、自動車事故の被害者に対する基本的な対人補償を確保するための制度です。対象となるのは人身事故によって生じた損害で、傷害による損害では、治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料などが対象になります。

傷害による損害の支払限度額は、被害者1人につき120万円です。

120万円は「事故に遭えば120万円を受け取れる」という金額ではありません。事故・損害の調査を経て、実際に生じた損害について支払基準にもとづき、120万円の限度額の範囲で支払額が決まります。

自転車やスマホなど物の損害は対象外

自賠責保険・共済は人身事故による損害を対象とする制度であり、自転車や持ち物などの物的損害は補償の対象になりません。

たとえば、事故で腕をけがして通院することになり、同じ事故で自転車の前輪とスマートフォンも壊れたとします。この場合、治療関係費などの人身損害と、自転車やスマートフォンの物損は分けて考える必要があります。

自賠責保険・共済で扱うのは人身損害の部分で、自転車やスマートフォンの修理費・買い替え費用は自賠責の対象にはなりません。

物損と人身の損害を整理する考え方については、自転車事故の修理費・治療費の記事もあわせて確認してください。

被害者請求では必要書類をそろえて相手の自賠責へ提出する

被害者請求の提出書類を封筒へ入れる手元

まず請求先へ連絡して必要書類を確認する

被害者請求を行う場合は、加害者が加入している自賠責保険会社・共済組合へ請求書類を提出します。

必要書類は請求する内容や事故の状況によって異なる場合があります。すべての事故で完全に同じ書類を用意すればよいわけではないため、まず請求先へ連絡し、自分のケースではどの書類が必要なのかを確認してから準備すると分かりやすくなります。

交通事故証明書・事故発生状況報告書・診断書などを準備する

国土交通省の案内では、傷害の被害者請求における主な必要書類として、次のようなものが示されています。

  • 自賠責保険金・共済金/損害賠償額/仮渡金支払請求書
  • 交通事故証明書(人身事故)
  • 事故発生状況報告書
  • 医師の診断書
  • 診療報酬明細書

このほかにも、通院交通費や休業損害など、請求する内容によって必要になる書類があります。また、事故の内容によって追加書類を求められる場合もあります。

たとえば、相手の車のナンバーや氏名は分かっていても自賠責会社の名前を覚えていない場合は、前述した交通事故証明書を確認して、自賠責損害保険会社・共済組合の名称と証明書番号を確認します。そのうえで請求先へ連絡し、必要な書類を案内してもらうと手順を整理しやすくなります。

治療中でも損害額の確定前に請求できる場合がある

病院の待合で診療書類をバッグへしまう人

支払った治療費などを限度額の範囲で都度請求できる

被害者請求は、治療がすべて終わって損害額全体が確定するまで何も請求できない、という仕組みではありません。

国土交通省の案内では、総損害額が確定する前でも、被害者が医療機関へ治療費等を支払った都度、限度額の範囲内で何度でも自賠責保険会社・共済組合へ請求できるとされています。

たとえば、通院が続いていて最終的な治療費がまだ分からないものの、すでに自分で治療費を支払っている場合があります。このようなときも、治療がすべて終わるまで待たなければならないとは限りません。

ただし、実際に自賠責の対象になるか、いくら支払われるかは、提出された資料などをもとに事故・損害の調査が行われ、支払基準に沿って判断されます。

なお、治療費の支払いに健康保険を使う場合は、第三者行為による傷病届の手続きが必要になることがあります。この手続きについては自転車事故で健康保険を使う場合の記事で確認してください。

当面の費用には仮渡金制度もある

当面必要となる治療費などのために、仮渡金(かりわたしきん)という制度もあります。これは、最終的な損害額が決まる前に、当面必要となる費用に充てるための金額を請求できる仕組みです。

加害者が加入している自賠責保険会社・共済組合へ請求でき、確認されている金額は、死亡の場合は290万円、傷害の場合は傷害の程度に応じて5万円、20万円、40万円です。

傷害の場合に誰でも同じ金額を受け取れるわけではありません。傷害の程度によって請求できる金額が異なるため、自分の場合に該当するかは請求先へ確認してください。

被害者請求の期限と現在の支払い状況を確認する

自宅でスマートフォンの入金状況を確認する手元

傷害・後遺障害・死亡で3年の起算点が異なる

被害者請求には期限があります。国土交通省の案内では、次のように起算点が分かれています。

  • 傷害:事故発生の翌日から3年以内
  • 後遺障害:症状固定日の翌日から3年以内
  • 死亡:死亡日の翌日から3年以内

ここでいう症状固定とは、症状が安定し、医学上一般に認められた治療を行っても、それ以上の治療効果が期待できなくなった状態をいい、医師によって判断されます。

「事故から全部一律で3年」と覚えるのではなく、傷害・後遺障害・死亡のどれに当たるのかを確認し、それぞれの起算点から期限を確認することが大切です。

たとえば、事故後すぐには被害者請求をせず、しばらく時間がたってから手続きを考えた場合でも、単に事故日だけを見るのではなく、何について請求するのかを確認します。

何らかの理由で請求が遅れる場合には時効更新の制度もあるため、期限が近い、または期限が分かりにくい場合は、早めに損害保険会社・共済組合へ確認してください。

一括払いなどで既に支払いを受けているときは現在の状況を請求先へ伝える

相手の任意保険会社等による一括払いで、すでに治療費などの支払いを受けている場合は、被害者請求を始める前に、現在どの範囲まで支払いが進んでいるのかを整理しておきましょう。

一括払制度では、任意保険会社等が自賠責分を含めて支払う仕組みになっています。そのため、被害者請求を検討するときは、現在の支払い状況を自賠責保険会社・共済組合へ伝え、別途どのような手続きが必要になるのかを確認してから進めると整理しやすくなります。

なお、任意保険会社等からすでに支払われている治療費等がある場合は、その金額が控除され、残りの損害について自賠責から支払われることになります。すでに支払われた額の合計が自賠責の限度額を超えている場合は、自賠責から新たな支払額が生じないこともあります。

まとめ|まず相手の自賠責と現在の保険対応を確認してから手続きを進める

自転車で車やバイクと接触してけがをし、自賠責の対象となる人身事故で相手車両に自賠責保険・共済がある場合は、被害者自身が相手の自賠責保険会社・共済組合へ直接請求する方法があります。

まず交通事故証明書などで相手車両の自賠責保険会社・共済組合を確認しましょう。相手の任意保険会社等からすでに対応を受けている場合は、一括払いで処理されているのかも確認します。

自賠責が対象とするのは治療関係費や休業損害などの人身損害で、自転車やスマートフォンなどの物損は対象外です。必要書類は請求内容などによって異なるため、請求先を確認したうえで、自分のケースに必要な書類をそろえていきます。

また、治療中で総損害額が確定していなくても、支払った治療費等を限度額の範囲で都度請求できる場合があります。傷害・後遺障害・死亡では請求期限の起算点も異なるため、被害者請求を考えている場合は、現在の支払い状況と期限を確認して手続きを進めましょう。

参考情報・出典